私には弟がおり、実家住まいなのでよく一緒に食事をします。
ある日、食事の際にテレビで馬が走っている映像を見ながら弟がある疑問を口にしました。
「なんで馬は草を食べているのにあんなにムキムキなのだろう」と。私はその疑問に衝撃を受けました。
私は今まで草食動物だから植物を食べているのが当然で、なぜ植物だけを食べて生きていけるのか、なぜ馬など草食動物でもムキムキな筋肉質なのか考えたことがありませんでした。
筋肉を作る為に必要なアミノ酸
動物は「食事」により外から必要なエネルギー等を体内に取り込み、生きることができます。中でも筋肉を作るにはタンパク質の元となるアミノ酸が必要不可欠です。
映像で見た馬など草食動物は牧草等のミネラルやビタミンなどを多く含む植物を食べますが、植物にはタンパク質は多く含まれていません。
そこでインターネット等で調べてみたところ驚きの事実が発覚しました。
草食動物もタンパク質を摂取している?
なんと、馬など草食動物は正確には植物をただ単に食べていたわけではありませんでした。
草食動物は胃や腸に微生物が存在し、草食動物が食べた植物を微生物が分解することでアミノ酸が生成され、それを吸収することでタンパク質を摂取しているそうです。中には植物を分解することで増殖した微生物も消化吸収し、タンパク質を摂取する草食動物(牛など)もいるようです。草食動物がムキムキな理由は、草食動物が微生物によってタンパク質を摂取しているからでした。
なお、肉食動物の胃や腸には植物を分解する微生物は存在しないそうです。
肉食動物と草食動物の胃の違い
ではなぜ草食動物の胃や腸には植物を分解する微生物が存在するが、肉食動物にはいないのでしょうか。
それは肉食動物と草食動物の胃のpHの違いが微生物の存在に関わっていました。肉食動物の胃のpHは1~3と極めて酸性が強いですが、草食動物の胃や腸のpHは中性のため、草食動物の胃や腸には植物を分解する微生物が存在することができるそうです。
では人間の体内ではどうかと調べたところ、人間の小腸及び大腸は中性に近いため微生物が存在することが可能なようです。しかし、小腸では微生物が存在すると植物以外の食べ物から摂取した栄養素の奪い合いが起きてしまい、大腸では栄養素吸収することができないのでメリットがあまりないそうです。
ムキムキとなる仕組みを活用して
地球温暖化や各地での紛争、価格の高騰などで世界的な食糧危機が問題となっています。また近い将来、タンパク質や栄養素不足で今より多くの人類が食糧危機による食糧問題に直面すると言われ、食糧危機に向けて昆虫食や栄養価が高いスーパーフード等多くの解決策が検討されています。
将来、草食動物のように微生物を体内に取り込み植物からタンパク質等を摂取できるようになれば、食糧問題の大きな解決策になるかもしれません。
【参考文献】
①古林賢恒.「特集の総括にかえて -野生動物との共存を探る-」.森林科学.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsk/39/0/39_46/_pdf(参照日2024年4月8日).
②山根 裕子.「人類の食の特徴と食と農業の現代的課題 食料問題の本質を考える」.
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