7-1.jpg 以前に、「シンガポールだより③ サスティナブル・シンガポール・ギャラリー訪問」でも紹介しましたが、シンガポールは天然の水源をもたない国です。
 水を確保する方法として、4つの蛇口と言われている、①貯水池、②隣国マレーシアからの輸入、③下水の再生、④海水淡水化があります。

 今回は、「NEWater(ニューウォーター)」と名付けられた下水再生水の工場「NEWaterビジターセンター」を見学した時の内容を紹介したいと思います。

日本の技術も使われている高度な水処理

7-2.jpg シンガポール政府が特に力を入れているのが水確保の内製化で、そのうちの一つが高純度の再生水「NEWater」です。下水再生工場にある「NEWaterビジターセンター」では、シンガポールにとっての水の重要性や、水をめぐるマレーシアとの関係、下水の再生過程の解説、再生過程の施設見学などができます。

 NEWaterは、下水処理場で通常の処理が終了した水に、更に「マイクロフィルター」「逆浸透膜」「紫外線殺菌」の3段階の浄化処理を施し、飲用可能な水準まで高度処理した再利用水です。この工程では日本企業の技術も多く使われています。

 再生水は工業用の他、心理的ハードル緩和のため河川に放流されていますが、WHO(世界保健機関)の飲料水基準をクリアしているそうです。現在5カ所ある「NEWater」のプラントで、国内の水需要の40%をまかなっており、2060年までには55%に引き上げることを目標にしているそうです。

無味無臭でした!

7-6.jpg ビジターセンターの見学ツアーの最後には、下水から再生した飲料水をもらえます。シンガポール人も飲みたがらないと噂で聞いていたので、恐る恐る飲みましたが、無味無臭でした(あくまでも個人の感想です)。
 NEWaterはペットボトルで販売もされている他、シンガポールで有名なクラフトビール醸造所「Brewerkz(ブリューワークス)」では、NEWaterを使ったビールも作られています。このビールは「尿や生活排水などの下水をアップサイクルして作られたビール」として評判です!

水リテラシーの高い国民性

7-7.jpg 私がビジターセンターを訪問したのは休日でしたが、小学生くらいの子供を連れた親子が多かったのが印象的でした。日本では、こういった施設は学校の社会科見学で行くイメージですが、休日に親が子供を連れて行くという点に、国民の水に対する意識や関心が高いように感じました。
 もともと天然の水源がなく、水を輸入に依存している中で、いま一押しの技術が下水から飲料水を作る技術なので、国民の関心も高いのではないかと思いました。街中でも「水を大切に」「一滴も無駄にしないでね」といった政府の掲示をよく目にします。7-8.jpg

 ちなみに、シンガポールの水道水は日本と同じ軟水で、そのまま飲用しても水質的には問題ありませんが、日本と違って特徴的なのが、国民の虫歯予防として「ふっ素」が添加されていることです。
 そのせいなのかわかりませんが、日本から持ってきた炊飯器で日本のお米を炊いているのに、日本で食べるよりも美味しくない感じがします。

 経営企画室 平野