オオスミは2022年にシンガポール駐在所を設立しました。
 これから毎月、シンガポールでの生活や文化の違い、環境やサスティナブルに関する話題をお伝えしていきます。ぜひ、お楽しみに!

国の緑化政策で国土の1/3が緑

shinga1.png シンガポールに来て最も印象的だったことの一つに、「街中に緑がとても多い」ことがあります。

 シンガポールの面積は東京23区より少し大きいくらいなのですが、国土の1/3が緑で、近代的な高層ビルが立ち並ぶエリアにいても常に視界に緑が入ってくるのでとても気持ちが良いです。しかもこの緑は元々あったものではなく人工的に作られていったと知り驚きました。

建国の父による緑化政策「Garden City(緑の都市)」

 小さな島国ながら世界有数のビジネスハブとしても知られているシンガポールですが、第二次世界大戦後の1965年にマレーシアから独立した時には、天然資源も産業もなく、今の姿からは想像もできない状況だったそうです。

shinga2.png そんな中で、建国の父と言われているリー・クアンユー初代首相は、世界トップレベルの緑の国を築いて東南アジアのオアシスになることで、海外からの投資家や観光客などに対して安心で快適なイメージを与えて国際的な競争力を高めていこうと考えたそうです。そのため、緑化は建国当初の1967年から国家戦略として進められてきました。

 政府の明確なコンセプトのもと、集中的な植林プログラムにより1970年末までに55,000本以上の植樹がされ、1974年には約158,600本、2014年には140万本に増加しました。

 他にも、1960年代には「政策の展開」「道路沿いの植樹」「公園の建設・設備」、1970年代には「色彩豊かな植物の植栽」「歩道橋などへの植栽」「埋立地の緑化」「駐車場への植栽」、1980年代には「フルーツの植樹」「維持管理の機械化」「コンピュータの導入」、1990年代には「生態系に配慮した公園整備」「住民参加の公園づくり」「公園ネットワークの形成」「公園の計画的改修」「木陰のある遊歩道整備」、2000年代には「住民のニーズにあった公園づくり」「住民と公園との共存・共生」「緑を楽しめる場の創出」という様に、しっかりと施策が実行されてきたからこそ、わずか半世紀にして今のシンガポールが出来上がったのだなと思いました。

「Garden City」から「City in a Garden」へ

shinga3.png 建国当初から進められてきた緑化政策は、2013年からは「City in a Garden」へと転換し、自然と共存し持続性のある都市づくりと豊かな国民生活を構築する新たなフェーズに入っているそうです。「City in a Garden」は都市全体がまるで庭園の中にあるようなイメージで、よくガイドブックなどでも目にするガーデンバイザベイなどもこの政策の一つです。

 また、すでに国土の1/3が緑で囲まれているシンガポールですが、2021年に発表された「シンガポール・グリーン・プラン2030(環境行動計画)」ではさらなる緑化を目指しています。

 例えば、「2030年までに、年間の植樹本数を2倍とし、100万本の植樹を達成する」「自然公園の面積を2020年と比較して50%増やす」「すべての居住地から徒歩10分の距離に公園を作る」など、今でも多いのにさらに2倍の木を植えるなんて凄すぎますし、すべての人が徒歩10分以内に公園がある暮らしなんて羨ましすぎます。

 このプランには他にも、ごみの削減やエネルギー、食料自給に関することなど様々な施策があるので、また別の機会に紹介したいと思います。

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 東京に住んでいた時は、都会は緑や自然が少なくて当たり前で、自然に触れたい場合は郊外や地方に出かけたり、住む場所を変えたりするものだと思っていたのですが、大都会でありながら緑に囲まれた暮らしができるシンガポールの街がとても気に入っています。

 ちなみに、自然がいっぱいのシンガポールには、カワウソやリスなどの小動物、あまり遭遇したくはないですがオオトカゲなども身近にいます!

 経営企画室 平野