エコアクション21(EA21)は環境省が策定した、中小企業向けの環境マネジメントシステム(EMS)です。ISO14001と比べて導入しやすく、環境経営の仕組みの構築や運営、環境負荷の低減、さらには脱炭素や環境法令順守の取り組みも同時にできます。
(エコアクション21の概要については、別のコラム「エコアクション21」とは?費用や認証を受けるメリットを解説をご参照ください)
本ブログでは、エコアクション21で対象とされている環境法令にはどんなものがあるか、該当する場合は何をすればよいのか、法令だけでなく自治体の条例も確認する必要があることなどについて、エコアクション21の現役審査員が解説します。
1.要求事項5「環境関連法規などのとりまとめ」
1-1要求事項の内容
環境経営を適切に行い、社会からの信頼を得ていくためには、組織に適用される環境関連法規などを適切に把握し、遵守することが必要です。エコアクション21の要求事項5では、組織に適用される環境関連法規などの遵守を確実に行うとともに、遵守のための取組について整理して一覧表に取りまとめることで、環境経営目標及び環境経営計画の策定(要求事項6)へ適切に反映させることを目的としています。
(1)事業を行うに当たって遵守しなければならない環境関連法規及びその他の環境関連の要求など、並びに遵守のための組織の取組を整理し、一覧表などに取りまとめる。
(2)環境関連法規などは常に最新のものとなるように管理する。
エコアクション21で対象とする環境法規は、環境に関して組織に具体的な義務(届出、許可、規制、基準など)が課せられるものです。組織に適用がある場合は、エコアクション21の管理対象とし、管理することが必要です。一方、罰則がなく努力義務が課せられているものや、法規の目的が労働安全に係わるものなど、必ずしも環境法令とはいえないものについては、エコアクション21の管理対象にするかどうかは、リスク管理の観点などから組織が判断します。
1-2エコアクション21で対象とする環境関連法規
環境一般 |
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大気汚染 |
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水質汚濁 |
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土壌汚染 |
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騒音 |
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振動 |
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地盤沈下 |
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悪臭 |
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化学物質 |
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廃棄物・リサイクル |
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土地利用 |
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地球環境保全・省エネ等 |
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条例 |
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1-3エコアクション21で対象とするかどうかは組織の判断による法規
エコアクション21では、労働安全衛生法、高圧ガス保安法、環境アセスメント法(正式名称:環境影響評価法)を管理対象とするかどうかは、リスク管理の観点などから組織が判断できることになっています。
2.環境関連法規一覧表
2-1一覧表に取りまとめる内容
一覧表などにまとめるべき内容の詳細さは、「組織が遵守するために必要な程度」であることが必要です。組織の規模、適用される環境関連法規の数、適用される内容の複雑さによって異なります。
<まとめるべき内容の例>
施設 | 対象となる施設、対象となる物資 |
---|---|
届出 | 設備や管理体制、責任者の届出 |
許可 | 設置許可、実施許可 |
測定 | 測定の方法、回数 |
排出基準 | 排出基準の遵守のための監視測定 |
記録 | 測定結果の記録、産業廃棄物のマニフェスト記録 |
報告 | 環境負荷物質排出量などの行政への報告、産業廃棄物の処理委託実績報告 |
保管 | 保管基準、産業廃棄物の保管基準 |
資格 | 必要な法的資格者、講習の受講者 |
責任 | 日常管理部門、行政との対応部門 |
2-2取りまとめる際のポイント①詳細さは組織の実態に合わせて決める
取りまとめる際に最も重要なポイントは、自社にとって義務が課せられている法規をもれなく網羅できているかです。
義務の具体例は、届出、許可、規制、基準などです。取りまとめの詳細さは、「組織が遵守するために必要な程度」にすると良いでしょう。必要以上に細かくし過ぎると日々の管理が負担になってしまい、抜け漏れが発生する可能性も出てきます。逆に粗すぎて必要な内容が漏れてしまうと、せっかく管理をしているのに意図せず法令違反をしてしまうリスクもあります。
2-3取りまとめる際のポイント②改正や新設を定期的にチェック!
そしてもう一つ重要なポイントは、法令は更新されたり、新たな法規がでてきたりする点です。
例えば、新たに規制がかけられたり、逆に緩和されたり、基準値が見直されたりと、大きな改正から小さな改正まで様々です。環境管理を担当している方にとっては、該当法令の日常管理だけでなく、法改正の情報を定期的に確認することも重要な業務となります。改正の頻度やタイミングは決まっていないので、どれくらいの頻度でチェックするのが良いかは一概に言えませんが、最低でも年に1回は確認をすると良いでしょう。毎月の法改正情報サービスを利用している企業、四半期ごと、半年ごとに確認をしている企業など様々です。
3.法だけじゃない、自治体の条例も要チェック!
環境関連法規には、国全体として定められている法規の他に、自治体によっては地域における環境保全を目的として条例が制定されていることもあります。法には適正に対応していても、自治体の条例への対応を見落としているケースも少なくありません。各事業所が所在する自治体のホームページ等で確認をして、該当する場合は対応が必要です。3-1条例の上乗せ規制と横出し規制
条例には、法と同一の目的でより厳しく規制をする「上乗せ条例」と、法では対象としていない事項を規制する「横出し条例」があります。
3-2東京都の例(東京都環境確保条例)
東京都が制定している環境に関する条例は「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(通称:環境確保条例)」です。
都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)・施行規則
都民の健康と安全を確保する環境に関する条例
3-3横浜市の例(横浜市生活環境の保全等に関する条例)
神奈川県横浜市が制定している環境に関する条例は「横浜市生活環境の保全等に関する条例」です。対象とする範囲は「大気・悪臭」「騒音・振動」「水質汚濁」「下水道」です。この他にも、地球温暖化やごみ・リサイクルに関する対応についても確認が必要です。
横浜市「生活環境の保全」
横浜市「温暖化対策」
横浜市「ごみ・リサイクル」
横浜市生活環境の保全等に関する条例
エコアクション21は、環境経営への取り組みを簡単かつ効果的に実現するための優れたツールです。特に中小企業にとっては、環境経営や脱炭素への取り組みの初めてのステップとして最適です。持続可能な社会の実現に向けて、EA21を活用して経営改善と企業価値向上に取り組みませんか。