エコアクション21(EA21)は環境省が策定した、中小企業向けの環境マネジメントシステム(EMS)です。ISO14001と比べて導入しやすく、環境経営の仕組みの構築や運営、環境負荷の低減、さらには脱炭素や環境法令順守の取り組みも同時にできます。
では、実際にはどのような取り組みをするのか、認証取得のハードルは?ISO14001との違いや取得費用等について、エコアクション21の現役審査員が解説します。
1.エコアクション21の特徴
1-1中小企業でも取り組みやすい「環境経営システム」
エコアクション21は、国際規格ISO14001と異なり、中小企業をメインターゲットとしており、分かりやすく、取り組みやすい仕組みになっています。
認証取得等にかかる労力・費用・時間もISO14001より少なくて済みます。
1-2やるべきことが明確
エコアクション21では、必ず把握すべき環境負荷として、①二酸化炭素排出量、②廃棄物排出量、③総排水量、④化学物質使用量を挙げています。また、それらを削減するための取り組み例や本業における環境への取り組みについて、分かりやすく記載しているため、環境パフォーマンスが向上します。
1-3環境経営レポートによる環境コミュニケーション
エコアクション21では、環境への取り組みの結果を「環境活動レポート」としてまとめ、公表します。事業者が環境への取り組み状況等を公表する環境報告は、自らの環境への取り組みを推進し、さらには社会からの信頼を得て、企業がより発展していくための重要な方法の一つです。
2.エコアクション21に取り組むメリット
2-1「経営力の向上」&「組織の活性化」
環境改善、業務改善、コンプライアンスの管理徹底、PDCAサイクル・全員参加、環境コミュニケーションなど、エコアクション21を通じた総合的な取り組みにより、経営力向上、組織の活性化が期待できます。
2-2ビジネスチャンスの拡大
近年、事業活動に際して、資材調達から生産、流通、販売までの全過程における環境負荷の削減など、製品やサービスのバリューチェーン全体を見渡した環境への取り組み(バリューチェーン全体のグリーン化)が普及しつつあります。取引の条件として、環境への取り組みが求められることも増えてきているようです。
エコアクション21の認証取得は、取引先などからの環境への取り組み要請に十分対応できることから、ビジネスチャンスが広がります。
2-3経営コストの削減
省エネ・省資源・廃棄物の削減などによるコスト削減はもちろん、作業効率・生産効率の向上や歩留まりの改善など経営上のムリ・ムダ・ムラの削減にも取り組むため、経営全般におけるコスト削減を図ることができます。
2-4 SDGsへの貢献
エコアクション21に取り組むことは、必然的にSDGsの目標達成に向けた取り組みにも繋がります。
例えば、「12.つくる責任つかう責任」、「13.気候変動に具体的な対策を」などに貢献することに繋がります。
2-5審査員からアドバイスが受けられる
エコアクション21では、審査の際や次回審査までの間に、担当審査員から環境への取り組みなどに関する指導・助言を受けることができます。
3.エコアクション21 とISO14001の主な違い
エコアクション21 (環境省が策定した国内規格) |
ISO14001 (国際規格) |
|
---|---|---|
取得企業数 | 7,573社 (2024年11月時点) |
14,460 社 (2024年11月時点) |
取り組む範囲・対象 | 認証範囲を限定できず、組織全体で取り組む必要がある | 複数事業所がある場合、1つの事業所のみで取得する等、認証範囲を限定することが可能 |
要求事項の項目数 | 13+1(環境活動レポート) | 17 |
現状把握方法 | 明確(環境負荷チェックと環境取組チェック) ※環境経営レポートの中に、二酸化炭素削減・廃棄物削減・化学物質削減・節水等の実績報告が必要 |
規格では具体的に規定していない (どういう内容にて環境活動に取り組むのかは、会社の経営課題に合わせて設定していく) |
内部チェック | 自己評価(方法については明確に規定されていない) | 内部監査 |
活動結果の公表 | 必須 (環境活動レポートの公表) |
公表は自己決定 (公表しなくてもよい) |
審査方式 | 2年更新で、中間審査・更新審査のサイクルの繰り返し 事前に書類審査があり、その後、現地審査を実施する流れ | 3年更新で、維持審査を2回、3年目に更新のサイクルの繰り返し 書類審査はなく、原則、現地を確認しての審査 |
審査・認証登録費用 | 30万円程度 (従業員100人未満でコンサル費用含まず) | 80万円~ |
維持費用 | 10万円/年程度 (従業員100人未満の場合) | 40万円~ |
取得されている業界 | 製造業、建設業、廃棄物の収集運搬・中間処理・処分業が多い | どの業界でも幅広く取得 |
主な取得理由 | 取引先からの要請、自治体における入札参加資格、金融機関等による融資の優遇など | 製造業:元請けからの取得要請で取得 建設業:入札評価での加点対象 商社・メーカー:海外取引上でのメリット など |
4.認証・登録の費用
エコアクション21認証を取得するには、「審査費用」と「認証・登録料」または「更新登録料」がかかります。
4-1費用の目安
審査費用と登録料を合わせた、エコアクション21の認証登録にかかる費用の目安は以下の通りです。
従業員数 | 審査費用+登録料 | |||
---|---|---|---|---|
登録審査 (初年度) |
中間審査 (2年目) |
更新審査 (3年目、以降2年ごと) |
中間審査 (4年目、以降2年ごと) |
|
~10 | 15万円 | 10万円 | 15万円 | 5万円 |
11~30 | 20万円 | 20万円 | 20万円 | 5万円 |
31~60 | 20万円~ | 10万円~ | 20万円~ | 5万円~ | 61~100 | 22.5万円~ | 10万円~ | 20万円~ | 5万円~ | 101~500 | 25万円~ | 12.5万円~ | 22.5万円~ | 7.5万円~ | 500~ | 40万円~ | 15万円~ | 35万円~ | 10万円~ |
※実際には、業種や事業所の数などにより審査費用が異なりますので、あくまでも目安としてください。
4-2審査費用・審査工数
エコアクション21認証の審査を受けるためには、まず審査費用が発生します。
審査費用は50,000円/人日で、現地調査時は別途交通費が必要です。
標準審査工数(製造業、建設業、修理工場、廃棄物・再生資源の収集運搬・中間処理・処分業等) 標準審査工数(サービス業、流通業、事務所等) 出典:エコアクション21 中央事務局(一般財団法人 持続性推進機構)
4-3認証・登録料、更新登録料(2年分)
従業員数 | 料金(税別) |
---|---|
~10 | 5万円 |
11~300 | 10万円 |
301~500 | 15万円 |
501~1,000 | 20万円 |
1,001~ | 30万円 |
出典:エコアクション21 中央事務局(一般財団法人 持続性推進機構)
エコアクション21は、環境経営への取り組みを簡単かつ効果的に実現するための優れたツールです。特に中小企業にとっては、環境経営や脱炭素への取り組みの初めてのステップとして最適です。持続可能な社会の実現に向けて、EA21を活用して経営改善と企業価値向上に取り組みませんか。