マイクロプラスチックは地球上の様々な環境に広がっていることが知られ始め、生態系や人体への影響が議論されています。
あまりに広範に分布しているため、地質年代において「人類の痕跡が刻まれた区切り」を議論する際に、地層に見られる指標の一つに、核実験によるプルトニウムなどと並んで、マイクロプラスチックが用いられています。
どんなところからマイクロプラスチックが見つかるのか
例えば、環境省が公表している海洋表層のマイクロプラスチックに関する調査・分析のデータベース(AOMI)によると、5mm未満の粒子やフィルム、繊維となって浮遊するマイクロプラスチックが世界中の海から報告されています。
そんな海で生活するカタクチイワシの消化管からは、150μmから1000μmのマイクロプラスチックが見つかっており、プラスチックに含まれる有害な化学物質が、魚に曝露されるリスクの増加が懸念されています※ⅰ。
マイクロプラスチックは、海だけでなく地表や大気にも存在し、富士山山頂からも、雲に漂う数μmから数十µmのマイクロプラスチックが報告されています※ⅱ。大気中のマイクロプラスチックは、呼吸によって動物に取り込まれます。人の肺を調べた研究では、12~2475μmのマイクロプラスチックが見つかっています※ⅲ。
体内に侵入するほど小さいナノプラスチック
肺だけでなく、血管内にたまった1μm未満のナノプラスチック粒子は、心筋梗塞や脳卒中などによる死亡リスクとの関連が報告されています※ⅳ。
人体に侵入するほど微小なナノプラスチックは調査自体が難しく、ペットボトル飲料を用いた新技術の実証研究では、100nm(0.1μm)から2μm以上のマイクロプラスチック粒子が測定されています※ⅴ。
多様な粒子の総称
私たちがひと括りに呼んでいるマイクロプラスチック、ナノプラスチックは、材質や形状などが異なる多様な粒子の総称です。
多様とはいえ、特にサイズの差異に関してはとても幅があると感じていたので整理してみました。
例えば、5mmと100nmの大きさの違いは、東京スカイツリーとテントウムシに相当します。今後、マイクロプラスチックをイメージするときには、このスケール感を忘れないようにしたいと思います。
お客様からマイクロプラスチック調査をご依頼いただいた際にも、サイズのイメージを共有しないと話がかみ合わないかも知れません。オオスミでは、目的をお伺いしてサイズを考慮した調査手法をご相談させていただきます。
※ⅰ Tanaka K, Takada H. Microplastic fragments and microbeads in digestive tracts of planktivorous fish from urban coastal waters. Scientific reports. 2016 Sep 30;6(1):1-8.
※ⅱ Wang Y, Okochi H, Tani Y, Hayami H, Minami Y, Katsumi N, Takeuchi M, Sorimachi A, Fujii Y, Kajino M, Adachi K. Airborne hydrophilic microplastics in cloud water at high altitudes and their role in cloud formation. Environmental Chemistry Letters. 2023 Dec;21(6):3055-62.
※ⅲ Jenner LC, Rotchell JM, Bennett RT, Cowen M, Tentzeris V, Sadofsky LR. Detection of microplastics in human lung tissue using μFTIR spectroscopy. Science of the Total Environment. 2022 Jul 20;831:154907.
※ⅳ Marfella R, Prattichizzo F, Sardu C, Fulgenzi G, Graciotti L, Spadoni T, D'Onofrio N, Scisciola L, La Grotta R, Frigé C, Pellegrini V. Microplastics and nanoplastics in atheromas and cardiovascular events. New England Journal of Medicine. 2024 Mar 7;390(10):900-10.
※ⅴ Qian N, Gao X, Lang X, Deng H, Bratu TM, Chen Q, Stapleton P, Yan B, Min W. Rapid single-particle chemical imaging of nanoplastics by SRS microscopy. Proceedings of the National Academy of Sciences. 2024 Jan 16;121(3):e2300582121.