サンプリング(=水や土を採取するとき)に欠かせないものと言えば、なんでしょうか。
サンプルの状態を損なわずに採取する『技術力』はもちろん大事ですが、今回取り上げたいのはもっともっと基本的なことです。
採取した水や土を入れるもの...『容器』です。
容器の種類と特徴
『容器』と一口に言っても、たくさん種類があります。大小の大きさはもちろん、その容器を構成する素材や、密封性が高い容器、遮光性のある容器...など。
分析技術グループでは様々な種類の容器を取り扱っています。それらの容器を、分析の目的や項目によって使い分けています。
簡単にご紹介しましょう。
ポリエチレン(PE)製容器
通称ポリ容器。PEは合成樹脂に分類されるプラスチック素材の一種です。プラスチック容器と言えば、スタンダードな形です。分析したい項目の数や使用する水の量によって、2L~100mlの大きさを使い分けています。水にも土にも使用します。
【使われている項目の一例】
生活系項目(水素イオン濃度、有機物分析、浮遊物質量等)、重金属項目の一部など
ガラス製容器
PE製だと分析したい項目の性質上、正しく結果が得られなくなる可能性のある項目(例えば、ポリ塩化ビフェニルなど、PEと構造が似ているような物質)があるときなどは、ガラス瓶を使用します。
ガラス容器には様々な形があり、分析したい項目の性質によって使い分けます。
揮発性有機化合物(VOC)など、気化しやすく、空間があると減ってしまうような項目には、密閉性の高い蓋のもの。日光や蛍光灯の光など、光による分解や減衰が起きてしまう項目があるときは、遮光性のものを使用します。
瓶の中に入ったサンプル全てを使用する項目では、取り出しやすいよう、口が大きい瓶を使用することもあります。また、分析に大量の水を使用するような項目の場合は、ガロン瓶という、2L以上の容量が入る瓶を使用することもあります。
このように、分析項目と容器は密接に関係しています。
【使われている項目の一例】
VOC(揮発性有機化合物)、ダイオキシン類、PCBなど
地味でも大事な仕事:容器準備
容器の選定ひとつで、結果が変わってしまうこともあります。一番わかりやすい例でいうと、使った容器がしっかり洗浄されないまま次のサンプルの採取に使われてしまったら、綺麗なサンプルであるほど、その汚れの影響を受けます。(壁面に付いているカスが水に浮いてきてしまう...など。)そのため、容器の洗浄方法もとても重要です。
弊社では、それぞれの用途ごとに容器の洗浄方法を変えています。
一つ代表的なものをご紹介しますと、陰イオン界面活性剤...いわゆる洗剤の成分を分析するサンプルを入れる容器は、洗剤を使って洗ってしまうと、結果に影響を及ぼす可能性があるため、洗浄用のブラシを専用のものにして水だけで洗う、といった工夫をしています。
サンプリングに合わせて容器を選定、準備して、使用後に洗浄を行い、また次のサンプリングに合わせて容器を揃える。容器準備という仕事は、あまり陽を浴びない仕事ではありますが、「分析」の土台を支える大事なお仕事です。これから容器を目にしたとき、「ただの容器」ではなく、目的に合わせて準備された「唯一の容器」として、見てもらえると嬉しいです。
分析項目によって採取容器の大きさや種類が変わりますので、水の分析ご依頼時に、事前にご相談いただけましたら、目的に合わせた専用の採取容器をご準備いたします。
最後までお読みいただきありがとうございました。