令和5年3月をもって高濃度PCBの処理期限となり、PCB廃棄物処理の節目を迎えました。
 今後は低濃度PCB廃棄物の処理を進めていくことになりますが、残念なことに低濃度PCBの期限内処分に関する取り組みが不十分であることが明らかになっています。

電気工作物に設置されている低圧コンデンサのPCB調査

 令和4年3月に環境省・経産省から「低濃度PCBに汚染された電気機器等の早期確認のための調査方法及び適正処理に関する手引き」が公表されました。
 nisie1.png電気機器には低圧コンデンサが組み込まれていることがあるのですが、それらは見落とされがちでした。この手引きはそのような低圧コンデンサ等を調べることを促すためのものです。

 弊社でも解体工事に伴う調査をご依頼いただいた現場で盤に設置された低圧コンデンサを発見したことがあります。結果的には低濃度PCB廃棄物に該当することが判明しました。さらに、低濃度PCB汚染が疑われる安定器が出てきました。

 安定器はこれまで原則的にPCBを使用したかPCB不使用かの2区分(すなわち、高濃度PCB廃棄物かPCB廃棄物に該当しないか)に分別されていました*。
 しかし、令和3年頃から一部のメーカーが微量PCBに汚染された可能性を否定できない安定器があると見解を改訂しました。微量PCBに汚染された可能性のある安定器は処分方法を確立されていないため、発見された場合は処分方法が確立されるまで保管するよう求められます。
 *廃安定器の仕分けにより濃度分析を行った残部材を除く

 また、高圧コンデンサについても、1990年以降に製造されたものはPCBに汚染されていないとされていましたが、一部のメーカーが見解を更新し2004年3月製造分までは汚染の可能性を否定できないとしました。つまり、濃度分析をして判定しなければならなくなったのです。

低濃度PCB廃棄物処理の今後は?

 nisie2.png 環境省は低濃度PCB廃棄物に関する情報サイトを開設しましたが、上記をどのように周知し適正処理を進めていくのか、具体的になっておりません。
 個人的には行政も手探り状態なのだろうと感じております。大きく動き出すとしても処理期限となる2027年が近づいてからになるのではないでしょうか。
 とはいえ、建物や設備の更新は随時発生しており、廃棄物の適正処理はその都度行わなければなりません。弊社もこれまでの経験を基に対応しつつ、手法をアップデートしているところです。

 PCB廃棄物を期限内に適切に処分するためには、所有者様も行政も我々調査業者もアプローチを変えていかないといけないと感じます。まずは本稿が皆様の注意喚起に繋がれば幸いです。

調査第三グループ 西江