異物・材料解析で"固化物"が調査対象になる場合はとても多いです。
固化物中にどのような化合物が含まれているかを調査することで、固化の過程を推測し原因調査を行うことが出来ます。
乾燥などによって配管を閉塞する固化物:例)スケールなどの堆積物
排水管や雨水配管では、スケールが堆積して断面が縞模様の固化物となって、配管を閉塞させます。微小なスケールなどが堆積及び適度な乾燥を繰り返し固化していくものと考えられています。
これらの固化物を構成する代表的な物質としては、炭酸カルシウムやリン酸カルシウムがあります。リン酸カルシウムは、尿などに含まれる物質のため、リン酸カルシウムが確認されれば排泄物由来の固化物(尿石)ということも予想されます。実際には、リン酸カルシウムの復塩などで存在する場合が多いです。
乾燥ではない硬化機構でできた固化物:例)セメント水和物を含有する固形物
通常の固化は、水分を失うことで起こる場合が多いものですが、セメントは明らかに異なった機構で固化します。
セメントは水と反応してセメントより密度が小さく比表面積の大きな水和物(セメント水和物)が生成し、水の存在した界面の空間を埋めることによって、接触界面が増加するために固化が起こります。簡単にいうと、隙間を生成物で埋めることによって硬化します。
水と反応して生成した物質(セメント水和物)としては、水酸化カルシウム(Ca(OH))、エトリンガイト(Ettringite.:3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O)などが知られています。水酸化カルシム、エトリンガイトなどが確認できれば、薬剤を混入して硬化したことが予想されます。土壌の改良材などには上記の硬化機能をつかったものも多くあります。
雑草防止のための固化材は、どのような機構で固まる?
雑草の処理の手間を減らすために、土壌の表面に粉と水を散布し固化させる薬剤があります。
それらを調査すると特徴的な物質として、ドロマイト(Ca -Mg (C O3)2)及び石英・粘土等が検出されました。ドロマイトでも軽焼ドロマイト(ドロマイトを焼いてCaO・MgOにした物質)であれば、水と反応させることによって水酸化ドロマイト(Ca(OH)2・Mg(OH)2)とし、更に硬化するものと考えるところですが、検出できたのはドロマイトのみの状態であったため、セメント水和物のような水和物ができることはなく、主に細かな粒子が適度な乾燥によって固化したものと推測されました。
なお、軽焼ドロマイトを使用するとアルカリ性になり、固化時に熱がでることから、用途や環境に配慮した設計なのかもしれません。いろいろな角度から、詳細を調査すればもっと面白いことがわかりそうです。
これらの含有化合物を調査する方法としては、一般的にはSEM-EDS/XRDで測定することで対応することができます。多くの固化材があり、それらの特徴を調べるのは興味のつきないところです。