kemikaru.png 破面解析業務を行うなかで、お客様からケミカルクラックについてご質問を受けることがあります。
 ケミカルクラックとは、応力+内部歪み+薬剤の3種が重畳して起こる現象になります。

 その機構ですが、プラスチック製品の場合、主成分であるC-H結合の長鎖の線状分子の集合体から形成されています。このポリマー間に溶剤が浸透・拡散すると、ポリマー間隔が広がり、分子間の結合力が低下します。すると、応力が加わっている箇所で急激にその応力が開放されクラックが発生し、破壊へ進展していくと考えられています。
 一般的に非結晶性プラスチック(PE,PP等)の方が、ケミカルクラックの影響が大きいと言われる理由は、この分子間の隙間が結晶性プラスチック(PVC,PMMA等)と比較し、大きいからだと思われます。

実験結果

 さて、環境応力割れを受けた製品の破面はどのような破面形態になるのか、簡易実験を実施しました。カッター刃で切欠けを作り、応力負荷状態下で薬剤(次亜塩素酸ナトリウム溶液)に浸漬させた結果です。
 下図のように、同じ切欠け部でも浸漬後はミラー面状様に観察され、樹脂が劣化して粒子が脱落した様な破面とも異なります。

  • alt文強制破壊-切創痕(浸漬前)
  • alt文ミラー面(浸漬後)
  • alt文粒子状の脱落形態
 環境応力割れを受ける速度は、素材の材質、環境要因、接触薬剤の種類などで一様ではありませんが、浸漬時間が長い程、上記SEM像よりもさらに鏡面状態に近い破面形態で観察されます。
 ただ、応力負荷条件下では、浸漬後瞬時に破損することもありますが、この場合は判断が難しく、破面解析含め、破損状況・破損状態など様々な現場状況も聞き取りながら、様々な観点から破壊要因を調査させて頂いております。

 分析技術グループ 鈴木(奈)