2019年から発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、世界中で新しい生活様式が広がり、在宅勤務が推奨され、外出を控えることが増えてきたことによって在宅時間が長時間に及び、近隣からの音による「騒音問題」がより問題視されるようになりました。
警視庁によると、東京都内では2020年に約157万1000件の110番通報のうち、最も多かったのが騒音公害であり、その通報件数は19万件にのぼり、2019年の約14万7000件よりも増えたそうです。オオスミにも2019年度以前に比べ、騒音の測定依頼が多く寄せられています。
そこで本日は、騒音と周波数・低周波音のお話をさせていただこうと思います。
音と騒音レベル
皆様が日常的に聞いている「音」とは、様々な周波数(波動や振動が1秒間に繰り返される回数。例えば1秒間に4回繰り返される波は"4Hz(ヘルツ)"となる。)が組み合わさってできた空気の振動(波)です。音をあらわす際に【大きい音】【小さい音】と表現する場合は音の大きさを、【高い音】【低い音】と表現する場合は音の高さ(周波数)を指しています。
様々な周波数の音ですが、人間の聴覚で補足できる周波数は20~20,000Hzと言われており、これを"可聴音域"と呼びます。
人の聴感覚は、2,000~5,000Hzを基準として、これよりも周波数帯が低ければ低いほど、周波数帯が高ければ高いほど耳の感度が悪くなっていきます。一般的に使われている「騒音レベル(単位:dB(デシベル))」とは、上記のような音の感度を考慮した補正を各周波数で行い、合成したものを指します。
また、実際の騒音は、一定の音が鳴り続けるのではなく、時間と共に不規則に変動していく「変動騒音」や、ほぼ一定もしくは変動が僅かである騒音が連続する「定常騒音」、ある時間間隔を置いて一定の騒音が間欠的に繰り返す「間欠騒音」等様々なタイプに分類されます。
低周波
先述した可聴音域の一部を含む1~100Hzまでの周波数を「低周波」と呼び、その中でも人間の耳では聞こえにくい20Hz以下の周波数帯を「超低周波音」と呼びます。低周波音は、モーターやファンの稼働、風切り、ヘリコプターの飛行、自動車の走行等、日常にあふれています。しかし、人が感じられるほどの大きさの低周波音はどこにでもあるわけではなく、ほとんどの場合、感じることなく日常生活を行っているのです。
一定の大きさの低周波音の及ぼす影響は、大きく分けて2つあります。一つは不快感や圧迫感、不眠などの症状が現れる人への影響(心身に係る影響)、もう一つは窓や戸の揺れ・がたつきなどの建具への影響(物的影響)です。低周波音が及ぼす影響に関して、明確な環境基準や規制基準は定められていませんが、苦情の発生が低周波か否かを判断するための目安として【参照値】が示されています。調査によって、図2に示す赤いラインを超える低周波が確認された場合に心身に係る影響が懸念され、青いラインを超える低周波が確認された場合に物的影響が懸念されます。
低周波音と周波数測定
オオスミでは、騒音レベルの他に低周波音(超低周波音含む)や周波数の測定も行っております。
実際にオオスミで測定した時によくみられるケースを基に模擬的に作成した一例を紹介したいと思います。
こちらは、周辺住民の方々より不快感や圧迫感があると苦情が入った企業の発生源と想定される設備直近と敷地境界にて周波数(低周波音域含む1~16,000Hz)を調査したと仮定した模擬結果です。5Hz、50Hz及び100Hz帯の3つの周波数帯が施設直近と敷地境界の両方で同様の特徴的なピークが確認され、当該企業様の設備が周辺の生活環境へ影響を及ぼしている可能性が考えられます。
また、低周波音域を調査すると、図4に示す通り、敷地境界において5Hzの周波数帯で物的苦情に関する参照値を上回り、図5に示すように、敷地境界において50Hz及び80Hz帯で心身に係る苦情に関する参照値を上回っていたことが判明します。
このように様々な測定を通して、苦情の原因となっている発生源が判明する可能性もありますが、地形や反響・周辺環境の状況によっては、調査をしてもわからない可能性も十分に考えられます。
オオスミでは、お客様のニーズに合わせ調査内容を検討いたしますので、お困りごとがあればぜひお問い合わせください。