プラスチックによる海洋汚染は地球規模の環境問題として注目されており、特に5mm以下の大きさの粒子はマイクロプラスチックと呼ばれています。マイクロプラスチックは環境中の有害物を吸着することが知られており、海洋生物が摂食することで生態系に影響を及ぼすと考えられています。

マイクロプラスチックの分析方法

 マイクロプラスチックの分析方法の基本は、海域、河川等の環境水をネットに通過させて水中の固形物を採取します。この試料からプラスチック(と思われる)粒子をピンセットで拾い上げ、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)で測定を行います。赤外線吸収スペクトルのパターンからプラスチックの種類を同定します。

実は定義や試験法が決まっていない

2.png マイクロプラスチックの大きさは5mm以下と定義されていますが、小さい側のサイズに定義がありません。多くの調査で採用されている試料採取用ネットの網目の大きさ、ピンセットで摘まめる大きさやFT-IRで測定できる大きさの限界等から分析対象を0.3mm~5mmとしている調査が多く見受けられます。

 また、通常は採取した試料からプラスチック粒子を効率的に分別し、精度よく種類を同定するために前処理を行います。前処理には藻や微生物由来の有機物を分解するために行う化学処理や、水中では軽いプラスチックは浮かび、小石などの重いものは沈む性質を利用した密度分離があります。 しかし、使用する試薬、処理する順序に決まりはありません。

有機物分解に使用する試薬の例 密度分離に使用する試薬の例
30%過酸化水素 飽和食塩水(1.2g/cm3)
フェントン試薬
(30%過酸化水素と硫酸鉄(Ⅱ)の混合溶液)
ヨウ化ナトリウム(1.6g/cm3)
酸溶液(硝酸、塩酸など) 塩化亜鉛(1.6~1.7g/cm3)
アルカリ溶液(NaOH、KOHなど) ポリタングステン酸ナトリウム
タンパク質分解酵素
 有機物分解では30%過酸化水素やフェントン法、密度分離ではヨウ化ナトリウムの使用が一般的に多く見受けられ、オオスミでも各種の前処理方法を経験しています。
 環境省では「漂流マイクロプラスチックのモニタリング手法調和ガイドライン」を公開しました。将来は試料採取方法や分析方法の標準化が図られるものと考えられます。

適正な分析方法

 マイクロプラスチックの調査は底質や海岸の砂、生体なども対象となっています。試験方法には媒体ごとの課題もありますが、これまでの経験や知見を活かし適正な結果が得られる方法を見出していきたいと考えています。

 分析技術グループ 管