ステンレス鋼は錆びないと思っていませんか?
材料解析でご相談いただく中にはステンレス鋼の錆に起因するものも多くあります。
そもそもステンレス鋼とは?何が腐食の原因となるのか等について解説します。
ステンレス鋼とは?
ステンレス鋼とは、日常の使用では錆びない鉄(合金)と言われ、生活用品から衛生器具、建築材料など、幅広い分野で活用されています。
ステンレス鋼(Stain-less Steel)はその名のとおり、「さび(汚れ)〈Stain〉が少ない〈less〉鋼〈Steel〉」、つまり「さびにくい鋼」としてよく知られています。
なお日本産業規格(JIS)における鉄鋼規格では、ステンレス鋼はSUS(Steel special Use Stainless : 錆びにくい特殊用途鋼)と表示されます。いわゆる不銹(ふしゅう)鋼といわれる所以です。
なお、JISでは炭素(C)が1.2%以下でクロム(Cr)を10.5%以上含む合金鋼と定義されています。
ステンレス鋼がさびにくい理由は?
ステンレス鋼がさびにくい理由は、表面を覆っている「不働態被膜」と呼ばれる酸化被膜のおかげです。
不働態被膜はステンレスの成分であるクロム(Cr)が大気中の酸素で酸化することによって数10nmのCr2O3(酸化クロム)となり生成されます。そのため何かの要因で被膜が破壊されても大気中であれば再生が可能となります(犠牲防食作用)。こういった特徴を持つ被膜に覆われているため「優れた耐食性を維持できる」=「さびにくい」のです。
さらにニッケル(Ni)やモリブデン(Mo)、窒素(N)を添加することで、耐食性を向上させたステンレス鋼もあります。代表的なステンレス鋼は、Cr(18%)、Ni(8%)添加のSUS304が該当します。
SCCの断面観察図(SUS304)
ステンレス鋼の腐食とは?
ステンレス鋼はあくまで「錆びにくい」だけで「錆び
ない」わけではありません。前述の不動態被膜を破壊するよう
な傷が生じた場合はそこから腐食が始まり、錆が発生
します。
ステンレス鋼の主な腐食の種類には以下のものがあります。
孔食:選択的に孔状に腐食する現象
すき間腐食:狭いすき間部に滞留した腐食性物質により発生する腐食
応力腐食割れ(SCC):状態的応力、材料起因および環境要因が相乗となりブランチング割れとなる現象
粒界腐食:結晶粒間でのCr欠乏症により粒界が先行腐食する現象
ステンレス鋼の腐食の原因は?
ステンレス鋼は耐食性に優れた材料ですが、不働態被膜を貫通する傷や環境中に存在する塩化物イオンなどによって腐食が生じることが多々あります。特に塩化物イオンは、海水のような高い濃度は必要なく、水道水に含まれる塩素(0.1mg/L以下)でも腐食の原因となります。
また、ステンレス鋼製品は表面の傷や孔食が起因となり、SCCが発生し、最終的に破断するケースも少なくありません。
オオスミでは、破面や断面の観察を通じて破損の原因を特定し、従来使用されている製品の改善につなげることが可能です。お困りのことがございましたらご相談ください。