ene.png私たち株式会社オオスミでは、2008年11月にエネルギー分散型X線分析装置付き走査電子顕微鏡(SEM-EDS)を導入したのを機に、粉末X線回折装置(XRD)や、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)などの既存設備を用いて「異物・不明物の調査」に取り組んでいます。

 私は、取り組み当初からこの「異物・不明物の調査」に携わっていますが、業務自体である異物や不明物を『調べる』という業務を遂行するうえで、必要となる情報を『調べる』といった、『調べる』ということについて日ごろから気を付けていることをご紹介します。

情報を『調べる』

 まず、情報を『調べる』ということについて考えてみます。
 私が大学を卒業して株式会社オオスミ(当時は、株式会社大角化学)に入社したころは、情報を調べるには、専門書のそろった書店や図書館などに行き、本を調べることが中心でした。その点、今はパソコンやスマートフォンがあれば、インターネットで様々な情報を調べることができます。「異物・不明物の調査」では、様々なお客様から多種多様な依頼を受けるため、様々な知識や情報が必要になります。インターネットで様々な情報が得られることは、業務を進めるうえで大きな手助けになっています。

 しかし、インターネットで得られる情報には注意をする必要があります。それは誤った情報が掲載されている場合があることです。見つけた情報をそのまま鵜呑みにするのではなく、「理論的に正しいか」について考えたり、複数の情報を集めて「同じことが述べられているか」、「偏った情報ではないか」などについて調べ、正しい情報であることを確認する必要があります。

異物・不明物を『調べる』

 つぎに、業務である異物・不明物を『調べる』ということについて考えます。
 異物・不明物を『調べる』上で最も重要になるのが、その『目的』です。しかし、この『目的』を知ることが意外に難しいことがあります。
 例えば、異物や不明物の試料が持ち込まれて「この物質がどんなんものか調べてください。」と頼まれることがあります。試料は、郵送も含め、お客様が直接持ち込まれる場合もありますし、第三者を通じて持ち込まれることもあります。また、当社の営業が持ち帰る場合もあります。
fu-.png 「目的は?」と聞くと、たいていの場合は、「この物質が何であるのかを知りたい。」という答が返ってきます。

 では、「この物質が何であるのかを知りたい。」というのが本当の目的でしょうか。物質名を明らかにすることが重要である場合も稀にありますが、多くの場合は、異物や不明物自体が何であるかを明らかにすることが目的ではなく、異物や不明物の発生を防いだり、発生した異物や不明物を取り除いたり、安全なものであるのか否かを確認するなどのために、異物・不明物を『調べる』ことが本当の目的の場合が多いといえます。そして、このような「本当の目的」を正しく知ることによって、お客様の求めている結果を導き出すことできます。

 依頼される異物・不明物試料の全てを物質名まで明らかにするのは案外難しいものですが、例えば、調査の本当の目的が「異物の発生を防ぎたい」というようなケースでは、異物・不明物が何であるかがわからなくても、発生状況や類似のケースに関する情報を調べることで、解決できる場合があります。
 また、「異物・不明物の発生によって生じた「汚れ」の除去がしたい」いったケースでは、異物や不明物の酸やアルカリ、有機溶剤などへの溶解性を調べることで、何を使って洗浄をすればよいかがわかる場合もあります。

 一方、「異物・不明物が安全なものであるのか否か」といった場合には、主成分の安全性だけわかればよいのか、微量成分まで考える必要があるのかなどで調査の可否や調査手法、調査費用、調査期間などが異なってきます。x.png主成分の安全性だけに注目するのであれば、異物や不明物の物質名まで判れば、その物質に関する安全性情報を調べることで解決できますが、微量成分まで考える必要がある場合は、調査自体が困難となります。
 したがって、目的を正しく理解することで、調査の可否が正しく判断でき、また、効率的な調査が可能となり、お客様の目的にあった調査結果を迅速に導き出すことが可能となります。

 これらのことは、何も「異物・不明物調査」に限ったことではなく、他の業務を行っていく上でも、とても大切なことだと思います。これからも、「情報の正確性」や「調査の本当の目的」に気を配り、お客様に喜ばれるような業務の遂行に努めたいと考えております。

分析技術グループ 岩井