不明物・異物解析を担当していると物質との"御縁"が生まれます。今まで聞いたことのないような物質が、不明物・異物の中に存在することがあるのです。私の見識の浅さゆえに、知らないことも多いのですが、このような物質との"御縁"は、知的好奇心がくすぐられて心が躍ります。

深い御縁

 "御縁"のあった物質の一つとして、過去に別のブログ(技術者のビックリ箱)で紹介した塩化物イオン由来の腐食生成物である"アカガネイト"があります。アカガネイトについては、日本環境測定分析協会の全国大会や神奈川県ものづくり技術交流会で技術発表した主題の中の一例として挙げたこともあり、私にとっては深い御縁となっています。

偶然生まれたアカガネイト

 アカガネイトは、オオスミの実験室のデシケータの中で偶然生まれました。外観を見たとき、最初は"赤カビ?"と思うほど生命力にあふれた姿をしていました。その姿を図1及び図2に示します。

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 このアカガネイトをよくよく調べてみると、不思議な物質であることがわかりました。オキシ水酸化鉄の一つであるアカガネイトの結晶構造モデルは、オキシ水酸化鉄の基本ユニットの一つである八面体の酸化鉄で中空(トンネル)構造を作り、その中に塩化物イオンが存在するというものでした。中空の大きさは、水分子が1個通過できる大きさという論文もありました。

 マクロ的な見方をしても、不思議な構造をしていることが電子顕微鏡観察でわかります。図3に図2に示したアカガネイトの繊維状物質(以下、"アカガネイト繊維"という)を示し、図3のなかに黄色線で囲んだ部分を拡大して図4に示しました。
 これこそが繊維の壁の内面で、小さな粒子や繊維が密集することで壁をつくり、その壁が繊維状に伸び菌糸のように見えたのがアカガネイト繊維だったことが想定できます。
 何故小さな粒子や繊維がそれ自体成長せずに密集し、大きな繊維状になっていくのか?不思議です。

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 私の場合は、どうも繊維状物質と"御縁"があるようですが、これからも"御縁"のある物質に出会えると思うと心躍る毎日が送れて嬉しい限りです。

分析技術グループ 宮崎