なぜ法令文は理解しにくい表現になっているのだろう?そう思われた経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。私もそう感じた一人です。
諸説ある中には、「庶民が法令文を理解する必要がないと考える役人が、意味不明な記述形式をとった」などといったものまであります。しかし、法令文を読む機会が増える程、法令文は庶民を排除するのではなく、出来る限り誤解を生まないように工夫された形式なのではないだろうかと思うようになりました。
労働者の定義とは?
ところで、会社経営者及び会社員の皆さんに身近と思われる法律の一つに、労働安全衛生法があります。この法律の目的は、「労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする」となっています。
労働安全衛生法には「労働者」という単語が出てきますが、皆さんは「労働者」と聞いてどのようなイメージを浮かべますか?労働安全衛生法では、「労働者」を以下のように定義しています。
労働安全衛生法第二条第二項:労働基準法第九条 に規定する労働者(同居の親族のみを使用する事業又は事務所に使用される者及び家事使用人を除く。)をいう。⇒「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
知ってビックリ!!
労働安全衛生法の法令文を読んで私が驚いたことがありますので、その一部を紹介します。
作業環境測定の実施義務が掲げられています。しかし、大学で学んでいる学生が研究室内でSDS(安全データシート)により有害性が示されているトルエンやクロロホルムなどの有機溶剤や特定化学物質を使用していても、「労働者」の規定が適用されないために、作業環境測定の実施義務が発生しないのです!!
では、有機溶剤などを使用する研究室で作業環境測定の対象になる人は、誰なのでしょうか?「労働者」の定義からは、大学から賃金を支払われている教授や講師の方々になります。
ただ、作業環境測定の対象物質を使用している学生の健康を守るためには、研究室の作業環境測定を実施・評価を行い、より良い環境作りを行うことが必要なことは言うまでもありません。
『労働安全衛生法』にはこのほかにも興味深い内容が規定されています。
少しでも関心を持たれた方は、一度読まれてみてはいかがでしょうか?思いがけない発見があるかもしれません。
オオスミのホームページ内にある『環境部長®』サービスも、是非ご覧ください。
https://www.o-smi.co.jp/workplace/e_chief.html