近年、水質・土壌・産業廃棄物など規制項目追加や基準値変更の法改正が相次いで行われています。例えば、有害項目の1,4-ジオキサンやクロロエチレン(塩化ビニルモノマー)が新たな項目として追加され、トリクロロエチレン、1,1-ジクロロエチレンの基準値が見直されました。
環境法令改正の経緯
基準項目や基準値の改正など、環境保全に関する重要事項の多くは、環境大臣の諮問機関である中央環境審議会(以下、中環審)で検討し、閣議決定等を経て告示・施行されます。法改正に当たっては、基準値設定の検討や規制検討物質の特性や水、土壌、産業廃棄物などの媒体に応じた試験方法など、検討内容が多岐にわたるため諮問から答申までに数年かかる場合があります。
1,4-ジオキサンに関連する法改正の経緯
2016年3月29日に1,4‐ジオキサンとクロロエチレンが土壌環境基準項目として追加され、基準値が設定されました(2017年4月1日施行)。
1,4-ジオキサンに注目し、法令改正の経緯を図に示しました。
図 1,4-ジオキサンに関連する法改正の経緯
1,4-ジオキサンの場合、環境省所管の法令については、水環境リスクに関する知見を集積するための「要調査項目(①)」、人の健康などに影響があるが、環境水の検出状況から判断された「要監視項目(大概の項目に指針値が設定されている)(②)」、人の健康の保護及び生活環境の保全の上で維持されることが望ましい「環境基準(③)」、と徐々に扱いが厳しくなり、その後「水濁法(④)」「廃掃法(⑤)」及び「海防法(⑥)」と順次改正が進みました。
土壌関係では、「土壌環境基準(⑦)」に追加されましたが1,4-ジオキサンの特性から土壌ガスの測定が困難なため、「土対法⑧」への追加は見送られました。しかし、土壌溶出試験や地下水試験は可能であることから、汚染実態の把握に努めるよう助言しています。
水道水 水質基準の法改正に注目
図を見ると、有害項目の1,4-ジオキサンは厚生労働省所管の水道水質基準の改正【Ⅰ】【Ⅱ】を踏まえて、環境基準を検討していることが判ります。水道水の水源は河川水や地下水などの環境水であることを鑑みれば、環境基準の設定との関連性が高くなるのは当然のことでしょう。
また、国土交通省所管の下水道法も水濁法の排水基準の改正と連動して下水排除基準が改正【Ⅲ】されていることにも注意が必要です。
環境関係の法令の全てが図に示した経路で改正されるわけではありませんが、環境省所管の法令は、水道法、下水道法、その他様々な法令と密接な関係性があるため、広い視野で動向を監視することで、改正の予測が可能となります。