うだるような暑さが続いていたある年の夏、私は温熱環境調査に携わっていました。その調査は、省エネを目的として実施する断熱塗装工事の効果を検証するために、建物の内外で温度調査を実施するというものでした。調査地点のうち最も太陽光の影響を受けやすい場所として、建物屋根部分の表面に温度センサを設置していました。
目を疑うような光景
ある日点検に行くと、目を疑うような光景が待っていました。なんと、温度センサのケーブルコネクタが外れていたのです。この部分は雨水浸入防止のため養生テープによって二重に被覆していたのですが、そのテープが剥がれていた上にコネクタまで外れていたのです。さらによく調べてみると、センサ先端部も傷つき断線していることが分かりました。
犯人は誰だ?
原因を考えたのですが、はじめは分かりませんでした。風雨にさらされていただけではこうはならないですし、イタズラをするような第三者が入れる場所でもありません。
途方に暮れて、ふと周りを見回していると、カァカァと鳴いているカラスの姿が目に入りました。
その時ピンときました。「犯人はアイツだ!」と。
カラスは、好奇心旺盛な鳥であるため、見慣れないものをついばんで遊んでいたのではないかと考えました。
どのような対策が良いか・・・
犯人はほぼ判明したのですが、調査期間はまだ残っており、至急対策をとることが求められました。
そこで、いろいろと情報を収集した結果、釣り糸を使って対策を実施することにしました。
カラスは、釣り糸のように見えないものに引っかかると、痛みと警戒心によってその場所に寄り付きにくくなる習性があるそうです。また、釣り糸であれば影による表面温度測定結果への影響は限りなくゼロに近いと考えました。
対策の効果は・・・
対策を施した後は、調査期間終了まで、カラスが温度センサやケーブルコネクタを破損させようとした形跡は1度も認められませんでした。欠測期間が最小限で済んだため調査結果に影響は出ず、無事に業務を終えることが出来ました。
調査を実施する際に、風雨や第三者への対策は想定していましたが、野生の鳥に調査を妨害されるとは思ってもみませんでした。今後、調査を実施する際の良い教訓となりました。