アスベスト分析には3つの方法があります。一体どのように別れ、どんなメリット&デメリットがあるのかアスベスト分析技術者である私自身の見解も含めて調べてみました。
どのように別れたのか調べてみました
第一次石綿問題が30~40年前に発生し、石綿に関する規制ができあがりました。当時はクリソタイルのみが対象でした。その後、落ち着いていましたが、クボタ事件※がきっかけで再びアスベストが注目されるようになりました。
※クボタ事件:2005年、大手機械メーカーのクボタは「兵庫県尼崎市のクボタ旧神崎工場の従業員74人がアスベスト関連の病気で過去に死亡し、工場周辺に住まいを持つ中皮腫で治療中の住民3人に200万円の見舞金を出す」と公表。
アスベストの種類も1種類から3種類になり更に2006年には6種類にまで増えました。
分析方法も、厚生労働省が出していた方法(平成8年法及び平成17年法)がありましたが2006年に初めて、日本工業規格で規格化され、2008年に異例の早さで改正されました。更に、国際規格の方法などとの違いや問題などが表沙汰になり、最終的には2014年に、JIS A 1481-1,-2,-3と枝番で分かれました。
(以下、枝番1を1法。枝番2を2法。枝番3を3法と呼称します)
内容は何が違うのでしょうか?
1法は、国際規格に準拠した方法で実体顕微鏡と偏光分散顕微鏡を使用してアスベストの判定を行う方法です。建材試料を実体顕微鏡で観察し、アスベスト繊維を抜き取り、偏光顕分散微鏡で判定をします。
2法は、今までの規格を前提に修正を加えた方法です。まず、建材試料を粉体状にしてその試料をX線回折装置で測りアスベストの回折角があるかどうかの定性確認をして、位相差分散顕微鏡にてアスベスト繊維を判定します。
3法は、X線回折装置で各アスベストの定量をする方法です。
※この方法は定量を対象とした方法なので今回は深く触れません。
簡単に言うと・・・
1法は、技術者が経験を積み実体顕微鏡で観察しアスベスト繊維を見つけて偏光分散顕微鏡にてアスベストの種類を判定します。
2法は、X線回折装置でアスベストの有無と種類を一度判定し、位相差分散顕微鏡にてアスベストの種類を判定します。
両方法とも、分散顕微鏡を使用するのは変わりありません。
メリットとデメリットは何が考えられるでしょうか
見やすいように表にしてみました。
メリット |
デメリット |
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1法 | ・判定までの時間が短い。 ・あまり、高価な機械を必要としない。 |
・判定には、高度な熟練者が必須。 ・全て人間の目で確認が行われる為、熟練度に よって判定が変わる可能性がある。 |
2法 | ・X線装置と顕微鏡で確認する為、1法ほどの 熟練者を必要としない。 (機械の目+人間の目) |
・判定までの時間が1法より掛かる。 ・高価な機械が必要となる。 |
私、個人的な意見としては・・・
現在、定性分析は1法か2法のどちらかを用いて行います。しかし、より高い精度を求めるのであれば、分けずに1法と2法を組み合わせて行えると良いと思います。
例えば、建材試料が入荷し、粗粉砕をして500μmの篩(ふるい)を通し、上に繊維状の物が残った場合は、その繊維を実体顕微鏡で観察しほぐして適宜の浸液にて偏光分散顕微鏡にてアスベスト観察を行う。この段階で、アスベスト繊維が判定できれば終了。出来なければ篩(ふるい)を通した試料を用いてギ酸処理液をろ過して残渣をX線回折装置で確認し位相差分散顕微鏡で判定といった感じで行われると良いと実際に分析をしていて思いました。
☆号外です!☆
この記事を書いている最中に、日本工業規格の改正が行われるとの情報がありました!
内容は、詳しくはわかりませんが、アスベストの分析方法の枝番-4が追加されそうです。
枝番-4には、1法用の定量方法であるポイントカウント法が採用されそうです。
これにより、1法の定量は4法、2法の定量は3法と区別されるかもしれません。