『PCB廃棄物の高濃度と微量はどう区別するのか』と、よくお客様からご質問いただきます。
どちらに区分されるかによって廃棄物処理手続きが異なるため重要なポイントですが、現在では低濃度PCB廃棄物という言葉も登場しており、余計にややこしく感じるかもしれません。
PCBの無害化処理期限が2027年3月までに延長
かつてPCB廃棄物の処理期限は2016年とされていましたが、まだ大量に保管されているため処理期限が延長されました。直接現場に行く機会の少ない分析技術グループに籍をおく身ですが、おかげさまで絶縁油の採取の現場に携わる機会が多くなりました。
採取には細心の注意と気配りを
絶縁油の採取は、蓋を開けたり、穴を開けたりすれば油はすぐに出てきますので、誰でもできる作業です(電路からはずれている機器に限りますが)。その簡単な作業をオオスミが行う意味は、安全・確実に採取することと、PCB廃棄物の取り扱いについて精通していることだと思います。
水質や土壌の採取では、コンタミネーションに注意を払いますが、絶縁油の採取ではそれに加えて飛散・漏洩にもより注意を払わなければなりません。分析が終わるまでは調査対象にPCBが含まれているかどうかわかりません。もしも機器から油が漏れており、その油にPCBが含有しているとわかったら、機器中の油の処理だけではすまされないので処理費用は膨れ上がります。
含有するPCBの濃度で区別
PCB廃棄物は、含有するPCBの濃度が5000mg/kgより大きければ「高濃度PCB廃棄物」、5000mg/kg以下であれば「低濃度PCB廃棄物」に区分されます。また、「低濃度PCB廃棄物」は、さらに「微量PCB汚染廃電気機器等」と「低濃度PCB含有廃棄物」に区分されます。
さて、冒頭の質問ですが、数値での区別というよりは、意図的にPCBを絶縁油として使用したものが高濃度、非意図的にPCBが絶縁油に含有しているものが微量という区別になります。ですので、高濃度かどうかは、製造年及び型式からメーカー情報で確認できればすぐに判断できますが、微量は分析してみないと判断できないことがほとんどです。
わかりにくいPCB廃棄物処理
現場対応の数が増えても、これらの説明には毎度四苦八苦しています。重要なポイントですので詳しく説明したいところですが、冗長な説明になっては精通しているとは言えません。とはいえ、お問い合わせいただければお時間の許す限り詳細にご説明いたします。
※環境省のガイドライン「低濃度PCB廃棄物収集・運搬ガイドライン 」pⅠ-1-1
にわかりやすい図表がありますので、そちらもご参照ください。
さて、この機会にPCB廃棄物について略説させていただきましたが、2027年3月まで延長された「無害化処理期限」とは処理を完了させる期限となります。廃棄物の種類や処理場によっては数年前に処理終了を予定している場合もありますので、所有者の皆様はくれぐれもご注意ください。
オオスミでは絶縁油の採取・分析だけでなく、処分のコンサルティングや手続き支援もご協力いたします。