法に従った測定を行っていると、お客様に説明してもなかなか納得してもらえないようなことがあります。また、質問されると説明に窮し、こちらの理解のあまさを痛感することもあります。

現場の状況から出た測定者の疑問

 とある作業場の作業環境測定。対象は粉じん。正確に言えば「空気中の土石、岩石、鉱物又は炭素の粉じんの濃度の測定」。勿論、これに該当する粉じんの発生源はある。しかしながら、同時にオイルミストも発生している。そしてどちらかと言えばオイルミストの方が多い。この状態で測定を行った場合、対象となる発生源からの粉じんよりもオイルミストの方が、測定結果への影響が大きいのでは?そして、この測定結果で正しい評価が行えるの?といった疑問がわいてきます。

 有害性の観点から言えばオイルミストも無害とは言えません。しかしながら、「空気中の土石、岩石、鉱物又は炭素の粉じんの濃度の測定」と言った場合、オイルミストは対象外とも思えます。オイルミストも別途測定するのがベストと考えられますが、あくまでも法に則った測定では、別途測定という選択肢はありません。

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法に定められた測定

 作業環境測定は「労働安全衛生法」と、それに繋がる「粉じん障害予防規則」や「作業環境測定基準」に従い実施されます。それらから関連する事項を要約すると
①粉じん障害防止規則より
 空気中の土石、岩石、鉱物又は炭素の粉じんの作業環境測定を行うべき作業場は、常時「特定粉じん作業」が行われる屋内作業場とする。
②作業環境測定基準より
 空気中の土石、岩石、鉱物又は炭素の粉じんの測定は、分粒装置を用いるろ過捕集方法及び重量分析方法、若しくは相対濃度指示方法(一点以上にて前述の方法を同時に行う)にておこなう。
となります。

 以上から、オイルミストが発生する作業場は、作業場としては測定対象に含まれませんが、定められた測定方法では、オイルミストと粉じんの区別がつきません。

明確に答えにくい結論

 特定粉じん作業の作業場にオイルミストがある場合、測定結果にはオイルミスト分がどうしても含まれてしまいます。役所に確認しても「その測定方法で行った結果で評価すること」と言われます。

 無論、オイルミストを含んでも十分に低い結果であれば、有害性として問題は無いと言えますが、高い場合ですとオイルミストが多い可能性もあります。

 お客さまに、単に「オイルミストは粉じんの作業環境の測定対象に含まれるか?」と問われた場合、作業場としては含まれませんが、測定ではオイルミストも含まれてしまうので、NOでもありYESでもあるような、一言では答えられない結論となります。

調査第二グループ 灰塚